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初花凛々
第31章 花笑み
「やべ、あと10分しかねーぞ」
「えーっ!」
「早くマフラー巻いて」
「待って、待って〜っ!」
年越しの時も、二人は一緒にいた。
今日は凛の部屋で、あの歌を聴きながら、今年最後の日を過ごした。
凛のアパートの近くの川では、年越しに合わせ花火が数発打ち上がる。
凛は毎年その夜空に打ち上がる花の音色を聴くだけ。
「寒いし、一人だし。部屋でひっそりと年越しを迎えてたの」
川に向かいながら、凛は思い出し、呟く。
「外に出ても、きっと恋人たちで溢れてるんだろうなって。卑屈になって」
そんな凛の手を、麻耶はきゅっと握りしめながら。
「じゃあ、この花火見るのってもしかして凛初めて?」
「もちろんだよ」
「そっか」
嬉しそうな麻耶の横顔を見て、麻耶のえくぼの存在に、初めて凛は気が付いた。
「麻耶ってえくぼがあるんだね」
「え、嘘」
「ほんと。ほら、ここ。可愛い」
凛は言っておきながら、ハッとする。
男の人に可愛い、だなんて。失礼だったか、と。
けれど麻耶はそんな凛の言葉に、再び可愛い笑みを覗かせる。
「……凛といると、色んな発見があって、面白い」
「え?どんな発見?えくぼのこと?」
「まぁ、色々だよ」
そうやってはぐらかすのは、いつものこと。麻耶は面倒くさくなったり、話が長くなりそうになるとそうやって話を逸らすということも、凛にとっては発見だ。
「……麻耶」
凛は麻耶の名前を、意味もなくこうして呼んでしまう。
いや、意味はある。
名を呼び振り返る麻耶と目を合わせて、なんだよ、と笑う麻耶の笑顔が見たいから。
だからこうして、名前を呼ぶ。
「……麻耶、って名前、女みたいで嫌いだったんだけどさ」
「そう?素敵な名前だよ。響きも綺麗」
「凛に呼ばれると、この名前も悪くないなって思える」
麻耶はこんな風に、簡単に凛を翻弄する。
それは話すようになってから今まで、ずっと。
「……私もそう。初めて麻耶に凛って呼ばれたのは、プールサイドだった」
あの時後ろから抱きしめられて、耳元で名前を囁かれて。
その時から?いや、もっとずっと前からかもしれない。
凛は麻耶に惹かれていた。
「麻耶」
凛は麻耶の名前を呼ぶ。
好きだよと、ありったけの想いを込めて。
「えーっ!」
「早くマフラー巻いて」
「待って、待って〜っ!」
年越しの時も、二人は一緒にいた。
今日は凛の部屋で、あの歌を聴きながら、今年最後の日を過ごした。
凛のアパートの近くの川では、年越しに合わせ花火が数発打ち上がる。
凛は毎年その夜空に打ち上がる花の音色を聴くだけ。
「寒いし、一人だし。部屋でひっそりと年越しを迎えてたの」
川に向かいながら、凛は思い出し、呟く。
「外に出ても、きっと恋人たちで溢れてるんだろうなって。卑屈になって」
そんな凛の手を、麻耶はきゅっと握りしめながら。
「じゃあ、この花火見るのってもしかして凛初めて?」
「もちろんだよ」
「そっか」
嬉しそうな麻耶の横顔を見て、麻耶のえくぼの存在に、初めて凛は気が付いた。
「麻耶ってえくぼがあるんだね」
「え、嘘」
「ほんと。ほら、ここ。可愛い」
凛は言っておきながら、ハッとする。
男の人に可愛い、だなんて。失礼だったか、と。
けれど麻耶はそんな凛の言葉に、再び可愛い笑みを覗かせる。
「……凛といると、色んな発見があって、面白い」
「え?どんな発見?えくぼのこと?」
「まぁ、色々だよ」
そうやってはぐらかすのは、いつものこと。麻耶は面倒くさくなったり、話が長くなりそうになるとそうやって話を逸らすということも、凛にとっては発見だ。
「……麻耶」
凛は麻耶の名前を、意味もなくこうして呼んでしまう。
いや、意味はある。
名を呼び振り返る麻耶と目を合わせて、なんだよ、と笑う麻耶の笑顔が見たいから。
だからこうして、名前を呼ぶ。
「……麻耶、って名前、女みたいで嫌いだったんだけどさ」
「そう?素敵な名前だよ。響きも綺麗」
「凛に呼ばれると、この名前も悪くないなって思える」
麻耶はこんな風に、簡単に凛を翻弄する。
それは話すようになってから今まで、ずっと。
「……私もそう。初めて麻耶に凛って呼ばれたのは、プールサイドだった」
あの時後ろから抱きしめられて、耳元で名前を囁かれて。
その時から?いや、もっとずっと前からかもしれない。
凛は麻耶に惹かれていた。
「麻耶」
凛は麻耶の名前を呼ぶ。
好きだよと、ありったけの想いを込めて。