この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
初花凛々
第32章 例えるならば薔薇
「広報の橘さくらです。よろしくお願いします」


その子の名前は、その日初めて知った。


薔薇じゃないんだ……と凛は思った。


さくらは初め、卓の端っこに立っていた。麻耶に話しかけるでもなく、目を合わすでもなく。避けるかのように。


麻耶もまた、さくらに話しかけたりしない。


不自然なほどに避けあっているような、そんな二人のことを凛は気にしつつ____


「胡桃沢さん、あれ取って」

「あ、はい」

「水割り73でー」

「かしこまりました」


営業の注文に徹した。営業の面々は普段、接待の際気を揉みまくって相手方に徹するため、時には我儘したいなどと言っていた。


「おまえら自分でやれよ」


麻耶が言い、凛からマドラーとグラスを奪った。


「ちょっ、なにこれ!須田っち!」

「美味いだろ」

「19じゃねえかよ!うっすいわ!」


麻耶は野村に薄い焼酎を作ったらしい。うすいうすいと言いながら飲む野村のことを、悪戯が成功した子どものような顔で麻耶は笑って見ていた。


「胡桃沢さーん」

「はいっ」

「これも美味しいよ?」


などと言い、今度は小松が凛にグラスを差し出した。カルピス酎だという。


「凛ちゃんはカルピス飲みませーん」


麻耶は小松のグラスを退け、凛にウーロン茶を手渡した。


「……麻耶」

「メガネに油断してんじゃねぇ」


もしかして、それで不機嫌だったのかと凛は思った。


凛が優と連れ立って現れて、それで。小松とも笑い合っていたし。


「麻耶……もしかして」

「なんだよ」

「英語で言うジェラシーとかいう類の」

「横文字にすんな」


麻耶は認めた。日本語で言う、嫉妬だ、と。


嫉妬という単語は自分に縁がないと思っていた。


それも他でもない、麻耶の口から言われるなんて。


凛は感動した。


感動して思わずまた、満面の笑みを咲かせてしまう。


「……なに笑ってんの」

「ごめん、麻耶可愛いよ」


また、男性に向かって可愛いと言ってしまった凛。けれども可愛いのだから、仕方がないと凛は開き直った。


「ふふ、麻耶、好き!」


今度こそ凛は失言したかもしれない。


麻耶以外誰も聞いていないと思われたその台詞を、ジッと耳を澄まして聞いている者の存在に、幸せの虹の中にいる凛は気付かない。
/452ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ