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初花凛々
第32章 例えるならば薔薇
凛は小松がこれから何を言い出すのか。どんな風に凛を追い詰めるのか、ある意味胸を弾ませながら待っていた。


「……なんか胡桃沢さんって、思ってるより強そう」

「どういうこと?」

「なんつーか……まぁ。めげなさそうというかなんというか」

「そうかな?」

「うん。俺応援してるからさ、ぜひ頑張って」


応援してると言いながらも、どこか面白がっている風な小松を凛は睨んだ。


「でも、安心して。須田は今本当に胡桃沢さんのことしか見てないと思う」

「なんでそう思うの!?」


思わず凛はムキになり、小松のメガネの奥にある目をジッと見た。


「……見てたらわかる」

「だからどんな風に!」

「説明は出来ない」

「なにそれ!」


ギャーギャー言っていたら、「何してんの」って、麻耶が来た。


「こいつに気安く話しかけんな」


麻耶が冗談まじりに、小松を牽制する。


すると小松は「こういうところ」と言って笑った。


「じゃーね、胡桃沢さん。いつでも話聞くからね」


小松はご機嫌にそう言うと、ウインクでもしそうな笑みを浮かべながら去って行った。


「あれ〜もしかしてこれジェラ場面だったり?」

「ふふ。そんなんじゃないから、小松さんとは」

「そんなんだったら困る」


麻耶は西嶋に相当飲まされたのか、いつもよりも酔っ払っている気がした。


その瞬間に、わぁっと周囲から、声があがったのを凛は聞いた。


麻耶はこんな公衆の面前で、口付けをしてきた。


それも部屋の中で、二人きりの時間にするような、舌を入れてくる濃厚なやつを。


「んんん〜!」


ドン、と凛は麻耶の胸を叩く。けれど酔いの回った麻耶はそんなこと、御構い無しという感じで。


凛を抱きしめて。


更に深く、口付けをした。



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