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初花凛々
第33章 茜さす
「須田くんと付き合ってるの?」


コソコソと陰口を叩かれたあと、こうして面と向かって言われるのは、逆に潔いなと思った。気持ち良いくらいに。


「いえ、よくわかりません」


凛もまた、正直に答える。


「陰でなんて言われてるか知ってる?」


それはたったさっき言われたから、凛は知っている。


「なんであの人なんだろう……みたいな……」

「なんだ。知ってたんだ」


如月はクスッと笑った。その顔を見て、如月はやはり童話に出てくるお姫様と魔女を上手く足したような雰囲気だなぁと凛は思った。


「教えてあげる。須田くんはね、胡桃沢さんみたいな人はタイプじゃない」

「……それも知ってます」


凛は麻耶の好みのタイプは知っている。


椿や、橘さくら。それにコンビニで遭遇したあの女性。それぞれ皆、花のように美しく甘い。きっと麻耶の好みはそれに違いないと凛は思っていた。


「前も言ったかもしれないけど、胡桃沢さんて色気がないもの。だからきっと、須田くんを満足させること出来ないんじゃない?」


そのことも、凛は承知だ。満足させるどころか、手を焼かせてしまっているのだから。


如月はそのあともあーだこーだと並べた。けれど今までお決まりのように言われてきた"あの台詞"を、如月は言わなかった。


_____この男だけはやめときなよ


何度も言われてきたその台詞の代わりに、如月は言った。


「……どうやって落としたの?」

「へ?」

「や、いいや。今のなし」


如月は曖昧にはぐらかし、「良くて3ヶ月かな」などと言い残し、いなくなった。





「やっぱり、くるちゃん先輩ってすごい……」


隣にいた新山は、ぽつりと呟いた。
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