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初花凛々
第35章 月の色人
凛は急に恥ずかしくなって、誤魔化すように酒を作り始めた。


大きめのグラスに氷を入れて、買ってきたばかりのパッソアを半分ほど入れる。そしてそこに、オレンジジュースを注ぎマドラーで混ぜた。


カラカラと氷が奏でる音が耳に届く。


冷えたレモンに塩をまぶし丁寧に洗い、それを輪切りにして、ミントと共に飾り付けた。


「よくわかったね、俺の好み」

「さっき麻耶から伺っていたので」


瀬名と新山にはオレンジ割を作った。


凛はジーマを飲むことにした。


青色の瓶が、スッキリとした味わいを予感させてくれたから。







「でさぁ、凛ちゃん。さっきの続きなんだけど」


おもむろに瀬名が口を開き、凛に話を振ってきた。


「俺と奈々は、実はセフレとかではないんだ」

「ふふ、そうなんですか」


では、二人の関係は?凛がそう問う前に、新山が言った。


「私と瀬名さんは、セカンドというやつです」


凛は、セカンドと聞いてもピンとこない。


「野球のポジションではないよ?」


隣から麻耶の茶々が入るが、凛はまさに野球のポジションかと思っていた。


「……セカンド?」


凛はもう一度口にする。新山はそれに頷くと、「二番目の女です」と、補足した。


瀬名と新山は、互いに恋人がいるらしい。けれど上手くいかない時や、何か心許ない時。


身体を重ねるのだ、と。


「なんでかなぁ、奈々とたまにヤリたくなんだよ」

「や、やり、とは」

「SEX」


凛は頭がパンクしそうなのをどうにか堪えて、ジーマを一口流し入れる。強い炭酸が、頭を冷やしてくれる気がした。


「そ、それは恋人さんは知ってるのでしょうか?」


そんな凛の問いかけには、瀬名も新山も首を横に振った。


「不純ー」


麻耶がそう言うと、瀬名は笑った。


「もう何年もこうだから」と、言いながら。


まだまだ恋愛初心者の凛には到底理解出来ない瀬名と新山の関係。


けれども隣にいる麻耶は、随分と涼しい顔をしている。


_____これが、世間一般の恋愛なのか。


そう凛は思った。


























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