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初花凛々
第35章 月の色人
「いや、違うから。セカンドなんかそうそうないよ。」

「違うの!?」


瀬名と新山には来客用の布団を敷き、リビングで寝てもらい、凛と麻耶は早々と寝室へとやってきた。


そこで話される議題は、もちろんセカンドについて。


麻耶はそうそうないと言ったけれど、よく思い返せば、椿も如月も、麻耶を好きなはずなのに西嶋とSEXしていたことを思い出した。



「麻耶は経験あるの?」

「……」

「ちょっと黙らないでよ」


いつもは上手に誤魔化す麻耶も、不意打ちの問いかけに思わず黙り込んでしまった。


「あるんだ……」

「だとしても、過去だから」

「私はない」

「うん」

「私は……、麻耶が初めてだもん。なんにも知らない……全てがファースト」

「ファースト」


麻耶は凛の言葉に、吹き出し笑いをしてしまった。


「なにが可笑しいの」

「いや、ごめん」


凛が真剣であればあるほど麻耶は笑ってしまう。


「……さっきも言ったじゃん。凛は特別なんだよって」

「……うん」


甘い、甘い


重ねられた唇からは幸福の味がして、凛は全身が甘だるいもので包まれてゆく気がする。


_____と、その時


"……っ!"


微かに、けれど確実に凛の耳に届いた声。


その声には聞き覚えがある。


どの女性も、その時の声は似たり寄ったりなのかと凛は思った。


そう、壁を抜けてリビングからは、SEXの時の声が_____


それは麻耶の耳にも届いていたようで、ありえないと麻耶はぼやいた。


凛にとっても、普段会社の先輩後輩として仲の良い新山のそんな声を聞くのは、正直抵抗があった。


SEXするのは悪いこととは言わないが、なんとなく気まずいと凛は思った。


「……大丈夫」

「え?」

「気にならなくしてあげる」

「え、えっ!ひゃあ〜」


ぼうっとしていた凛を、麻耶は素早くベッドに組み敷いた。


「……でも、凛は声我慢してね」

「へ?」

「凛の可愛い声は、俺だけが知っときたいから」


嫉妬という名の鎖。


心地良い強さで縛られて、もっとキツく縛ってと、凛は思った。



















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