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初花凛々
第38章 風花
今日は全然ドラマチックじゃないと凛は思った。


今ここに、ヒーローとして瀬名が現れて。やっぱりおまえが好きなんだと、強く抱きしめたり、とか。


そんな展開を期待していたが、何もないまま刻一刻と時間は過ぎてゆく。


……いや、凛だって、そこまで夢見る女ではない。本当はわかっている。そんな夢みたいな、ドラマみたいなこと、この世であるはずがないのだ、と。


けれど、ほんの少しでも。新山を笑わせたいとか、楽しませたい。そんな思いから、今日凛は腕を振るった。





「……私って、いつもこうなんです」


コットンキャンディーソーダを見つめながら、新山は呟く。


「なにかあれば、すぐに逃げたくなってしまうんです。如月さんと揉めた時もそう。逃げることばかりを考えていたんです」


今回もそうだ、と新山は言う。


「好きなら好きだと、言えば良かったのに。そんな勇気もなくて。やっばり私は逃げることしか出来ませんでした」


これが、現実。凛はまたひとつ、恋愛というものを学んだ気がする。


どんなに想っていても、上手くいかないこともある。


そして、恋愛がその人の人生さえも変えてしまうほどに、大きいものだということも。


「私もです。くるちゃん先輩と過ごせた毎日は、宝物のように思えます」


ありがとうございましたと、新山は深々と頭を下げた。


凛はソーダを口に含む。可愛らしい見た目のそれは、炭酸がすっかり抜けていて。なんとも気の抜けた味になってしまっていた。


「須田さんとくるちゃん先輩は、まるでお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいでした」


新山は、そう言って笑った。


「……向こう行っても頑張れよ、奈々」


いつもは冗談交じりに、わたあめと呼ぶのに。


その呼び名に、あぁ今は本当に最後の時なのかと、凛は思った。


引き止めるなら今だ、と思うのに。


身体が、口が動かない。


エールすら送ってやれない。


そんな自分が悲しくてたまらない。


「くるちゃん先輩。須田さんのご実家に訪れる際には、私の家にも遊びに来てくださいね」


新山はそう言ったが、イエスとも、ノーともとれるような。そんな曖昧な笑みを凛は浮かべていた。































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