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初花凛々
第38章 風花
麻耶に色々聞きたいこともあったけれど、今日凛は疲れ果てていた。


弁当の為に早起きしたし、苦手な高くて速いものにたくさん乗ったし。


それに、あとは。


「……明日から新山さんが遠くに行くと思うと、なんだか……」


_____やるせない。


心の底から、疲れていた。


「凛ちゃん」


そんな凛に、瀬名は声を掛けた。


凛はこの時初めて、瀬名の顔をまじまじと見た気がする。


_____こんな顔、していたっけ。


そう思うほど、今日の瀬名は落ち着いているようにも、覇気がないようにも見える。


「奈々って、昔からあんな奴で」

「……あんな?」

「そう。あいつは色々、弱くて。だけどここ2年は別人てくらい楽しそうに笑ってた。それはきっと、凛ちゃんのお陰だね」

「え……」


そんな事ない、と凛は思った。


「新山さんは、私と初めて顔を合わせた時から、ニコニコしていて。甘い香りがしていて。すごく可愛かった______ 」


"くるちゃん先輩!"


凛の頭に浮かぶのは、新山の凛を呼ぶ声。


"飲みに行きましょうよ!"


親父な凛をいつも、可愛い場所へと連れ出すのは新山で。


"応援してます。くるちゃん先輩なら、きっと大丈夫です!"


西嶋に抱いていた恋心を、1番最初に打ち明けたのも、励ましてくれたのも新山だった。


熱い


喉のずっと奥の方がなにか握りつぶされるような感覚がする


瀬名の顔はぼやけ


もう、見えない_____


「いいんだよ。いっぱい泣け」


凛は泣いた。


麻耶の腕の中で


新山を思って、泣いた。




_____頑張れ、頑張れ奈々


一度も名前で呼んだこともない


ただの先輩後輩の関係。


けれども凛は新山が好きだった。


そして新山もまた。






凛はいつか、会いに行こうと思う。


今度は、友人として。


会いに行こうと思う。
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