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初花凛々
第40章 狂い咲き
凛は自分で言うのも何だけれど、人の感情の起伏には敏感に気付ける方だと思っていた。


それは幼き頃からの癖のひとつ。


厳格で常に眉間に皺を寄せていた父親の機嫌を、常に伺っていた凛。それ故に周囲の空気を読み取ることには長けていた。けれど例え気付けたとしても、それを上手く解消してやる術は知らない。


そこの能力については、自信がないと凛は思っていた。


依然として、不機嫌なままの椿。


いつもはキャッキャと楽しそうにしているのに。








「凛」


また、どれくらいぼうっとしていたのか。


凛は手の中のジョッキに口をつけるのも忘れ、ただただ一点を見つめていた。


名を呼ばれ顔を上げると、麻耶が車のキーを手渡してきた。


「ん?」

「凛まだ飲んでないよね。ツマミが足りないから、コンビニ行こう」


凛はそれに対し良いとも悪いとも言っていないが、半ば強引に麻耶は凛の手を引き立たせた。


「お手手繋いでどこ行くの〜ん」


すっかり酔いが回り、顔が赤くなっている田川が話しかけてきた。凛はこの時まで、この場に田川がいるということをすっかり忘れていた。


私たちをからかうくらいならば、すぐそこにいる自身の恋人をどうにかしてと思った。


私たちが帰ってくるまでに、どうにか椿の機嫌が直っていればいいのにと。






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