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初花凛々
第40章 狂い咲き
凛が麻耶の車のハンドルを握るのは、これで2回目。


初めてではないとは言え、凛は緊張していた。


山道で、しかも日の暮れた夜に。


慣れない運転は気を使う。


「ごめん、例の如く嘘だよ」

「へ!?」


凛はまた、麻耶の罠に容易く引っかかる。


「2人きりになりたかったから」


そう言って麻耶は笑った。車内は暗く、目が慣れず、表情は見えないけれど、空気でわかった。


「……私も、2人きりになれるのは、すごく嬉しい」


こんなことをして、また椿にルール違反と言われるのかもしれない。


けれども。


重なる唇は、そんなことどうでも良いと思わせてくれる。


そう、2人のルールは、凛と麻耶が決めれば良いのだから。


2人きりになりたいから、キスをしたいから。


人目を忍んで口付けを交わす。


「もう小松に簡単にされんなよ」

「されないよぉ〜」


まぁ、全力で守るけど


と、麻耶は独り言のように小さく呟いた。


「ねぇ、麻耶!」

「ん?」

「今のセリフ……王子様みたいっ!」


せっかく良い雰囲気だったのに、この子はムードもへったくれもないのかと。麻耶は身体の力が抜けて行くようだった。


けれどもその発言から、いつも通りの凛にホッとしたのもまた事実。


「ねぇでも私おつまみ食べたい!」

「柿ピー?」

「チータラも!」


凛は怖かったけれど、死ぬときは麻耶も一緒だと思い、暗い山道を走り出した。

麻耶は横で、ヒーヒー騒ぎ、凛にうるさいと叱咤された。
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