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初花凛々
第41章 恋蛍
「SEX、しようよ」
凛はその言葉に驚いた。
それが発せられたのは、凛自身の唇なのだけれど。
なんの前触れもなく、口をついて出たことに驚いた。
麻耶も同様に驚いている。
そりゃあ驚くよね、とどこか冷静に思う凛もいた。
真夜中の洗面所で、幽霊まがいの女がいきなりそんなことを言ったら、誰でも驚く。と凛は思った。
「SEX、しようよ」
麻耶が何も反応しないので、凛はもう1度同じ台詞を口にする。
「え、どうした」
麻耶の口からは素直に疑問の声が出る。
凛も自分でも、どうしてこんなことを。それもいきなり口走ったのかわからない。
いや、本当はわかっている。
凛の中で、意識的に気にしないようにしていたことがあって。どうにか消化しようとしていたけれど、消化し切れない部分があった。
それは、椿の存在と言葉だった。
椿は、麻耶のことが好き。
けれど麻耶と凛は恋人同士で、椿にだって恋人はいる。
椿は今日、何も知らない凛に宣戦布告というものをした。
"いいよね?"
その言葉に、どんな目的が込められているか、凛は深くは知らない。
それよりももっと気になったのは
"須田くんも同じだと思う"
不特定多数を相手に出来る、そうでなければ満たされない椿と、麻耶は同じだと言われたこと。
それが喉に魚の骨が引っかかるようにして、そこから凛を黒く染めていた。
麻耶が、恋人同士だと認めてくれて、嬉しかった。しかし直後に聞いた椿の言葉に、簡単にグラつく心。
人はそれを、不安とか不満とかそういう名前で相手にぶつける。
けれど凛は、身体を求めることで麻耶にぶつけようとしている。
_____でも。そんな器用な真似、凛にはまだ早い。
SEXをしようと言いながら、冷静を装いながら。
凛のくるくるとした瞳からは、ぼろっと滴が落ちた。
それも、いくつも。
凛はその言葉に驚いた。
それが発せられたのは、凛自身の唇なのだけれど。
なんの前触れもなく、口をついて出たことに驚いた。
麻耶も同様に驚いている。
そりゃあ驚くよね、とどこか冷静に思う凛もいた。
真夜中の洗面所で、幽霊まがいの女がいきなりそんなことを言ったら、誰でも驚く。と凛は思った。
「SEX、しようよ」
麻耶が何も反応しないので、凛はもう1度同じ台詞を口にする。
「え、どうした」
麻耶の口からは素直に疑問の声が出る。
凛も自分でも、どうしてこんなことを。それもいきなり口走ったのかわからない。
いや、本当はわかっている。
凛の中で、意識的に気にしないようにしていたことがあって。どうにか消化しようとしていたけれど、消化し切れない部分があった。
それは、椿の存在と言葉だった。
椿は、麻耶のことが好き。
けれど麻耶と凛は恋人同士で、椿にだって恋人はいる。
椿は今日、何も知らない凛に宣戦布告というものをした。
"いいよね?"
その言葉に、どんな目的が込められているか、凛は深くは知らない。
それよりももっと気になったのは
"須田くんも同じだと思う"
不特定多数を相手に出来る、そうでなければ満たされない椿と、麻耶は同じだと言われたこと。
それが喉に魚の骨が引っかかるようにして、そこから凛を黒く染めていた。
麻耶が、恋人同士だと認めてくれて、嬉しかった。しかし直後に聞いた椿の言葉に、簡単にグラつく心。
人はそれを、不安とか不満とかそういう名前で相手にぶつける。
けれど凛は、身体を求めることで麻耶にぶつけようとしている。
_____でも。そんな器用な真似、凛にはまだ早い。
SEXをしようと言いながら、冷静を装いながら。
凛のくるくるとした瞳からは、ぼろっと滴が落ちた。
それも、いくつも。