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初花凛々
第41章 恋蛍
そう、麻耶は確かに、椿と同じ類の人間。


不特定多数の女性と関係を持っていたし、同時進行なんてこともザラにあった。


誠意なんてものはそこに無かった。自己満足や、その場凌ぎの快楽とか。


まるでブランド物の洋服やアクセサリーのように、自分の中の流行が過ぎれば、捨てていたものたち。




_____けれどそれは、過去の話。



麻耶は凛の涙を見て、すぐに悟った。


きっと凛は先ほどの椿の言葉に不安を覚え、それが堪えきれず涙となり溢れているのだ、と。


今麻耶の目には凛しか映っていないから、よく見ているから、わかるのであって。


けれど今凛は少し、黒に染まっているから。


経験が多いから、麻耶は女心がわかるんだと。卑屈に捉えてしまう。


「聞いて、凛」


麻耶はなだめようと必死だ。


その不安げなようでいて、強そうな瞳から思わず目をそらし、キスしそうになる。


こんな時の女性の対処法。甘い言葉と、口付けと。


しかし、凛にはそれは通用しない。


そのことを思い出し、もう一度その瞳と向き合う。


椿の言うことより、俺の言うことを信じてくれと。麻耶は凛の瞳を真っ直ぐに捉え、直球で伝える。


凛の涙に濡れた赤い瞳を見つめながら、あんなに派手に遊んでいた時間は、損すれど得にはならなかったと、麻耶は今強く思う。


「……今更、真面目になっても、やっぱ誰も信じないよな」


周囲がそれを認めてくれない。


過去は過去。消そうとしても、無かったことにしても。どうしたってそれは消えないものだから。


「ちょっと待って、麻耶。ひとつ質問」


凛はまるで授業中みたいに、手を挙げて質問した。突拍子もなく。


「えと……信じてとか、言ってるけど。信じてるよ?」

「え?」


また、麻耶は凛の心理を読み取ることは出来なかった。


「俺てっきり椿がまた変なこと言って、それで凛が不安になってるのかと思ったんだけど」


麻耶がそう言うと、違う違うと、凛は強く否定した。















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