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初花凛々
第41章 恋蛍
違うなら、じゃあなんなのかと。


麻耶は凛の赤くて、くるくるとした丸い瞳を見つめる。


凛はその目を一瞬細めてから、言った。


「こんなこと言えば、また馬鹿なこと言ってるって思われるかも知れないけど」

「いや、思うかもしんないけど、言って」

「……そこは、思わないよって言うところでしょ」

「凛に嘘言ったってしょうがないから」


ほら、と凛は思う。


麻耶を信じる信じないの前に


麻耶はこうして、信じさせてくれる。


凛にとって、麻耶を疑う必要も、要素もないのだ。


「……私の知らない世界にいた時の麻耶のこと、椿さんは知ってるのかって……悔しくて、悲しかったの」


もっと出会うのが早かったらな〜と、凛は不満そうに口を尖らせながら言った。


それを見て麻耶は、肩の力が抜けたような、透かされたような。そんな気持ちになって。


女性の気持ちを見抜くのも、手のひらで転がすのも、もっと簡単だったはず。


凛の中を見抜けなかった自分のことを、悔しく思った。


そういえば新山の時もそんな理由で落ち込んでいたなと、今更になって思い出す。


「……やっぱさ」

「うん?」

「凛っていいよね」

「なにが。どこが」

「そういうところ」

「どういうところ?」

「教えない」


もう言葉なんて、必要ない。


そう判断した麻耶は今度こそ。


なだめる為のものではない、本能のまま、求めるがまま。


とびっきり甘い、口付けを交わした。
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