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初花凛々
第41章 恋蛍
凛のくぐもった声が、唇を通し聞こえてくる。


求める力が強くて、凛は背中にひやりと硬い壁を感じた。


無我夢中、という言葉が、今の麻耶にピッタリだ。


「お、おまえら!続きは部屋で」


いきなり現れたのは小松。ここは皆が使う洗面所。


誰が来てもおかしくはない。


きっと顔を洗うとか目的があって小松はここを訪れたはずだが、真夜中にしかもラブシーンが前触れもなく飛び込んできて、小松はその場を離れざるをえなかった。
続きはウェブで、的な鮮やかなツッコミを入れ小松はそのままドアを閉めた。


凛は驚いて唇を離そうとしたが、麻耶はそれを拒むようにした。その唇を追いかけ、更に強く押し付ける。


今見られたのが椿じゃなくて良かった、と凛は思った。またあれこれと過去の麻耶を例にあげられちゃたまったもんじゃない。


麻耶は逆に、椿ならば良いのにと思う。


どれだけ本気なのか。見せつけてやるよと。密かに意気込んだ。


けれどここはグループで借りているコテージの中の、公共の場。しかも大切な"アレ"はここにはないということを思い出し、麻耶は凛の手を引いて寝室へと向かった。


寝室へと向かう廊下を歩きながら、凛は身体を火照らせていた。


木張りの廊下の床と壁からは、スギの木の匂いがした。


本来木の香りというものは、リラックス効果があるはず。けれど今の凛をリラックスさせ落ち着かせるものなんか、なにひとつとして無い。



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