この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初花凛々
第42章 桜色の川で
「それってプロポーズ!?」
_____翌日、勿忘草には、雫の興奮した声が響いた。
「ふふ、うん」
凛は照れくさそうに笑い、運ばれてきた桜湯に口を付けた。
桜の花の塩漬けが、ゆらゆらと湯の中で楽しそうに揺れている。
「へぇ、そっかぁ。まさかあんたが先に行くとは」
雫は喜びよりも先に驚きがやって来たと言い、目を丸くさせて凛を見た。
「私もビックリしたよ」
凛はほうっとため息混じりに、勿忘草の窓から外を眺め、昨晩の夜のことを思い浮かべた。
_____俺の最後の女になって
初めはピンと来なかった。
まさかあのタイミングで、麻耶がそんなことを言うなんて誰が予想しただろうか。
麻耶はそんな言葉を凛に向けた後、2度、凛を抱いた。
プロポーズのあとの麻耶は、普段よりも何倍も情熱的で。
ひどく甘い夜だった。
「で、あんたはなんて返事をしたの?」
雫の鋭い視線を避けるように、凛は皿の上に置かれた桜餅を見つめる。
桜の葉から、青空に映えるような鮮やかな桜色の餅が覗いていた。
「……実はまだ、返事をしていないの」
凛が正直に答えると、雫は信じられないというような、けれども予想していたとでも言いたげな、そんな瞳で凛を見た。
「……もしかして、返事は……」
雫が深刻そうな声を出したので、凛は慌ててそれをかき消す。
「返事はイエス。それしかないよ」
けれども、凛はまだ夢の中にいる気がして、返事を出来ずにいたのだ。
昨日、麻耶は高熱にうなされていたし。
それこそ、以前の凛のように"うっかり"だったのならばどうしようと、そればかりが頭に浮かんでいたから。
「……このあと、麻耶と桜を見に行くの」
「もう散りかけじゃない」
「うん、そうなんだけど。あえてこの時期にしたんだ」
"雪の舞う速さと、桜の舞う速さは同じなんだよ"
麻耶がそう教えてくれた時から、凛は麻耶と舞い散る桜を見たいと思っていたから。
桜吹雪を。
「今日、聞き返すんだ。もう一度」
あの日のように。
聞き返して、もしもう一度伝えてくれたなら。
今度こそ返事をしようと凛は思いながら、ほんのりと甘い桜色の餅を頬張った。
_____翌日、勿忘草には、雫の興奮した声が響いた。
「ふふ、うん」
凛は照れくさそうに笑い、運ばれてきた桜湯に口を付けた。
桜の花の塩漬けが、ゆらゆらと湯の中で楽しそうに揺れている。
「へぇ、そっかぁ。まさかあんたが先に行くとは」
雫は喜びよりも先に驚きがやって来たと言い、目を丸くさせて凛を見た。
「私もビックリしたよ」
凛はほうっとため息混じりに、勿忘草の窓から外を眺め、昨晩の夜のことを思い浮かべた。
_____俺の最後の女になって
初めはピンと来なかった。
まさかあのタイミングで、麻耶がそんなことを言うなんて誰が予想しただろうか。
麻耶はそんな言葉を凛に向けた後、2度、凛を抱いた。
プロポーズのあとの麻耶は、普段よりも何倍も情熱的で。
ひどく甘い夜だった。
「で、あんたはなんて返事をしたの?」
雫の鋭い視線を避けるように、凛は皿の上に置かれた桜餅を見つめる。
桜の葉から、青空に映えるような鮮やかな桜色の餅が覗いていた。
「……実はまだ、返事をしていないの」
凛が正直に答えると、雫は信じられないというような、けれども予想していたとでも言いたげな、そんな瞳で凛を見た。
「……もしかして、返事は……」
雫が深刻そうな声を出したので、凛は慌ててそれをかき消す。
「返事はイエス。それしかないよ」
けれども、凛はまだ夢の中にいる気がして、返事を出来ずにいたのだ。
昨日、麻耶は高熱にうなされていたし。
それこそ、以前の凛のように"うっかり"だったのならばどうしようと、そればかりが頭に浮かんでいたから。
「……このあと、麻耶と桜を見に行くの」
「もう散りかけじゃない」
「うん、そうなんだけど。あえてこの時期にしたんだ」
"雪の舞う速さと、桜の舞う速さは同じなんだよ"
麻耶がそう教えてくれた時から、凛は麻耶と舞い散る桜を見たいと思っていたから。
桜吹雪を。
「今日、聞き返すんだ。もう一度」
あの日のように。
聞き返して、もしもう一度伝えてくれたなら。
今度こそ返事をしようと凛は思いながら、ほんのりと甘い桜色の餅を頬張った。