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初花凛々
第42章 桜色の川で
雫と別れ、凛は夜道を足早に歩いた。
待ち合わせは18時。
普段通勤で使う駅を出て、右手に真っ直ぐ伸びている路地を進んで行ったところ。
枝垂れ桜が一本だけ佇んでおり、そこを目印にした。
まだ互いの連絡先を知らない2人には、わかりやすい目印のある待ち合わせが必須だった。
待ち合わせにはまだ10分以上も余裕があるが、凛は急ぐ。
いつも麻耶との待ち合わせのときは、逸る気持ちが抑えきれず時間に関係なく早足になってしまうのだ。
_____早く会いたい
心を通わせてから、いや、その随分前から、凛と麻耶はほぼ毎日同じ時を過ごしてきた。
もうあと2ヶ月も経たないうちに梅雨の季節がやってくる。
待ち合わせの目印である枝垂れ桜を見ながら、麻耶との時間を知ってから、もう1年になるのだなぁと凛は思った。
「ごめん!遅くなって」
凛が枝垂れ桜に見入っていたら、麻耶がやって来た。息を切らして。
「ううん、そんなに待ってないよ。私が時間前に来ちゃったんだ」
「そっか」
「ていうか麻耶、仕事してたの?」
今日は土曜日。本来ならば休日だが、到着した麻耶はスーツを着ていた。タイも上までキュッと締められている。
「あぁ、うん。昨日休んで迷惑かけちゃったからさ」
「そうなんだ」
昨日、伸びかけていた髭は綺麗に処理されているし。ボサボサ頭だって整えられている。眼鏡じゃなくて、コンタクトの麻耶は、まるで昨日とは別人のように見えた。
_____凛、好きだよ
普段滅多に口にしない愛の言葉を、麻耶は昨晩ベッドの上で囁いた。
凛の身体の隅々まで這い回った麻耶の指と舌。
赤い花弁がいくつも凛の白い肌の上に咲いた。
「_____凛、あのさ」
昨日の熱い交わりを思い浮かべていたら、いきなり麻耶が深刻そうな表情で話を切り出してきた。
凛はその顔を見て、思わず顔を引きつらせた。
「ごめん」
_____あぁ、やっぱり。
麻耶の口から出たのは、謝罪の言葉。
やはり昨日のことは間違いでした、次に出てくるであろう言葉を凛は想像して、傷つかないようそっと覚悟した。
待ち合わせは18時。
普段通勤で使う駅を出て、右手に真っ直ぐ伸びている路地を進んで行ったところ。
枝垂れ桜が一本だけ佇んでおり、そこを目印にした。
まだ互いの連絡先を知らない2人には、わかりやすい目印のある待ち合わせが必須だった。
待ち合わせにはまだ10分以上も余裕があるが、凛は急ぐ。
いつも麻耶との待ち合わせのときは、逸る気持ちが抑えきれず時間に関係なく早足になってしまうのだ。
_____早く会いたい
心を通わせてから、いや、その随分前から、凛と麻耶はほぼ毎日同じ時を過ごしてきた。
もうあと2ヶ月も経たないうちに梅雨の季節がやってくる。
待ち合わせの目印である枝垂れ桜を見ながら、麻耶との時間を知ってから、もう1年になるのだなぁと凛は思った。
「ごめん!遅くなって」
凛が枝垂れ桜に見入っていたら、麻耶がやって来た。息を切らして。
「ううん、そんなに待ってないよ。私が時間前に来ちゃったんだ」
「そっか」
「ていうか麻耶、仕事してたの?」
今日は土曜日。本来ならば休日だが、到着した麻耶はスーツを着ていた。タイも上までキュッと締められている。
「あぁ、うん。昨日休んで迷惑かけちゃったからさ」
「そうなんだ」
昨日、伸びかけていた髭は綺麗に処理されているし。ボサボサ頭だって整えられている。眼鏡じゃなくて、コンタクトの麻耶は、まるで昨日とは別人のように見えた。
_____凛、好きだよ
普段滅多に口にしない愛の言葉を、麻耶は昨晩ベッドの上で囁いた。
凛の身体の隅々まで這い回った麻耶の指と舌。
赤い花弁がいくつも凛の白い肌の上に咲いた。
「_____凛、あのさ」
昨日の熱い交わりを思い浮かべていたら、いきなり麻耶が深刻そうな表情で話を切り出してきた。
凛はその顔を見て、思わず顔を引きつらせた。
「ごめん」
_____あぁ、やっぱり。
麻耶の口から出たのは、謝罪の言葉。
やはり昨日のことは間違いでした、次に出てくるであろう言葉を凛は想像して、傷つかないようそっと覚悟した。