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初花凛々
第43章 紅差し指
「紅差し指……」


凛は麻耶の言葉を真似して呟いてみた。


なぜそのような名で呼ばれるのか、聞かなくとも理由はわかるようなその指を、麻耶は撫で、そして握る。


「俺の小指と、凛の紅差し指は同じ」


それはきっとサイズのことを言っているのだろう。わかる。


凛は麻耶の口から紡ぎ出される言葉にジッと耳を澄ませながらも、指先に麻耶の温度を感じていた。


「……早くこの指に____」


と言いかけたところで、「須田!」と、呼ぶ声がした。


凛はパッと麻耶の指を離す。


「午後からのプレゼンの資料、持ってるか」


見たことはないが、首から下げたネームプレートには営業部所属であることが記されている。


「デスクに戻ればある」

「悪いけど、至急でコピー頼んでもいいかな」

「了解」


それを合図に凛と麻耶も席を立った。午後、凛は諸々の手続きのため役所へ行かなければならない。去り際、エントランスで。


「凛」


引き止めるような声で、麻耶が凛を呼ぶ。


「なんつーか、あのさ」

「?」


麻耶の後ろには、急ぎの用を今か今かと待っている先ほどの男性がいる。凛はその様子を見ながら、何か言いたげな麻耶を見つめた。


「凛に惚れたのは俺が先!」


先ほどの桜庭に負けず劣らず、エントランスに響くような声でそう言うと、麻耶はパッと背を向けてエレベーターホールへ向かって歩き出した。


その場に残された男性は一瞬呆気に取られたあと、凛にひとつ会釈をしてから麻耶を追った。


早い者勝ち?麻耶らしくもない台詞に凛は笑い、外へ出た。


春の風は温かく、そして少しだけ冷たく凛の頬を優しく撫でた。






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