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初花凛々
第43章 紅差し指
「あれだ、人生経験は豊富でも恋愛経験は無い。好きな子が初めて出来た覚えたての中坊みたいなもん」

「ははっ、あり得る」


凛が役所から社に戻ったのは15時、何やら営業部隊が盛り上がり、笑い声と共に会話が繰り広げられていた。


凛の気配に気が付くと、楽しげな答弁を振るっていた西嶋は一瞬固まったが、間髪入れずに口の端をキュッと上げ笑った。


「噂をするとなんとやら」

「えっ」


その台詞により、話題の中心にいるのはどうやら麻耶と凛らしいことがわかった。


けれどその場に麻耶はいなく、盛り上がっていたのは西嶋、野村、小松。いつものメンバーだった。


「どうやって仕留めたんですか」

「パシャパシャパシャ」


3人はマスコミの真似事をしながら凛を取り囲んだ。


いくら休憩中とはいえ、こんな浮かれた空気で良いのだろうかと凛は不安になりフロアを見渡したが、部長の姿はなくホッとした。


代わりに、少し離れたデスクに座ってパソコンを覗いていたらしい如月と目が合ってしまった。


逸らすわけにもいかず、凛はただただ、魔女のような白雪姫のような如月の目を見つめていた。
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