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初花凛々
第45章 君影草〜鈴蘭
ロープウェイの中からは、徐々に眼下に広がる夜景を堪能できる。そのため車内は小さなライトがぼんやり灯っているくらいで、ほぼ暗闇だった。


他の客は皆我先にと窓の外を見ようとする中で、凛と麻耶は互いしか見ていなかった。





満員のロープウェイは山頂へ到着し、扉が開くと熱気が一度に外へと飛び出した。凛と麻耶は、周囲よりも一層暑さに包まれている気がした。互いの発する熱のせいで。


2人は誰よりもあとにゆっくりとロープウェイを降りて、展望台へと向かう。


展望台へと向かう通路の左右には土産屋が並んでいた。そこを抜け僅かに伸びている階段を登ると、もうそこは山のてっぺんだった。


「寒い!」

「寒すぎ」


また、同じ感想を口にして。


2人は目を合わせて笑うと、自然と手を取り合った。


そこはフェンスで囲まれていて、眼下には、そう、宝石箱をひっくり返したように輝く、夜景が広がっていた。


綺麗だね、とか。すごい、とか。そんな言葉では表せないほどの。どう表現したらいいのかわからない。


すると凛の隣にいた麻耶は、ぼそっと呟くように言った。


「……なんか、俺、泣きそう」






_______ほら、甘すぎるものを食べると泣きたくならない?


舞い散る雪を麻耶と見たとき、あまりに幸せで凛は思わず目を潤ませたことがある。


というか、凛は嬉しいと泣いてしまう。いつも。


麻耶とひとつになるときは、決まって涙が_____





「……うん、私もそう思う」


泣きたくなるほど美しい夜景を、大切な人と見ている。


2人の瞳には今、同じ宝石が散りばめられているんだなぁ。


そう思ったら、やっぱり泣いてしまいそうだ、と凛も思う。


「いつかさぁ」

「うん」

「この夜景を、3人とか、4人とかで眺めるときが来るんだろうな」


_______待ち遠しいよ


麻耶はそう呟いた。


「……そうだね、楽しみだね」


泣きたくなるほどの美しさ。


そんなキャッチコピーがお似合いの夜景を、凛も麻耶も写真に写そうとは思わなかった。


今、この目で見ているから。必要ない。そう思って。


2人はそれを目に焼き付けた。





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