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初花凛々
第46章 立夏
「俺も行ったことあるよ」


その日の夜、早速そのことについて凛と麻耶は話していた。


「全然知らなかった。いつ?」


「勤めてから3年目くらい?」


まだ人事部とフロアが別々の頃だから、凛の世界に麻耶がいなかった頃。


「どんな感じ?麻耶はどこに出向したの?ていうか自分から手をあげて言ったの?」


質問攻めの凛に麻耶は笑った。


「俺も小松と同じ、本社だった。ちなみに部長から行けって言われた」

「本社って忙しい?」

「おんなじだよどこも。けど、人に慣れることからのスタートって感じが大変だったな」

「だよね…」


それを聞き、凛はますます自分には無理だなと思った。


「小松さん、大丈夫かな」

「どうだろうな」


そんな麻耶の返しに、さすが男子校出身はサバサバしてるなぁと凛は言い、関係ないだろと麻耶はまた笑った。


「まぁあいつの話はもういいからさ」

「ん?」

「例の話、詰めよー」


例の話とは、それぞれの実家への挨拶の話。


そして今後どういう風に進めていこうかという話。


「…なんかさ」

「ん?」

「結婚するのかぁって、不思議な気持ち」

「そう?」

「うん。こんなかっこいい人が旦那様になるなんて」


麻耶はそれを聞き、飲んでいたお茶を吹き出すところだった。


「それにさ、結婚すれば、お正月だっていつだってそばにいられるんだよ」

「まぁそうだよね」

「これから先、一番近くにいられるんだって思ったら、嬉しくてなんだか、ふわふわしてる」


凛はまだ、夢を見ているような、ふわふわとした感覚があった。


これって現実?と思うくらいに幸せで。


そんな凛の手を強く繋いでいてくれる、麻耶がいて。


凛は心から幸せだと思った。

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