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初花凛々
第6章 恋水
「部屋着は俺に選ばせて」


そう言って須田が譲らないので、凛はお任せすることにした。


須田は女のことをよくわかっていると思ったし、自分よりもハイセンスを持ち合わせていそうなので、そうしたのだ。


「これなんかどう?」

「可愛い!!そういうの好き!!」


須田が選んだのは、パイル生地で淡い桃色をした部屋着。


上はカップ付きのキャミソールの上に薄手のパーカーを羽織るデザイン。下はちょうど膝丈のもの。


普段の須田の様子から、もっと色気むんむんのものを選ぶと思っていたのに。予想外に可愛くて、TPOに合ったデザインを選んでくれたことに凛は嬉しくなった。


「気に入った?」

「うん!これにする!」


なんだかんだ言いつつも、今日は須田に選んでもらって正解だったと凛は思った。


レジで会計をしていたら、「これも」と言って、須田が可愛らしいボトルもレジ台に乗せてきた。


「会計一緒で」

「えっ」


凛がいきなりのことにあたふたしている隙に、須田は自らの財布から店員に札を数枚手渡した。


「ちょっと!須田くん!」


可愛らしいショップ袋に入れられた、これまた可愛らしい部屋着を手に。凛は先を歩く須田のあとを追った。


「お金!ほら!」

「いらない」

「いやいや!何言ってるの!」

「礼の礼の礼の……礼だから。いんだよ」

「そんなの……」

「西嶋とうまくいくこと、俺も願ってるよ」

「え……」

「くるちゃんをプロデュース、的な?なんか面白いから。うまくいってほしいよ」


昔そんなドラマあったよねと、須田は凛に笑いかけた。


「だって……こんなの申し訳なさすぎる……」

「……なら、また飯作って。それでチャラにしよう」

「そんなんでいいの!?」

「俺もずっと一人暮らしなんだ。だから、手作りの飯って一番嬉しい」

「だったら……うん。作るよ」

「やった」


須田はまた、ニッコリと子どものような笑みを浮かべる。


それを見て凛もまた、お日様のように無邪気な笑顔を覗かせた。
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