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初花凛々
第7章 風薫る
須田の車は、凛と西嶋、そして悠介と椿を乗せて更に走る。


アスファルトが、もう夏のものになった太陽に照らされじりじりと音を立てているようだった。


「あっ!海!海が見えるよ!」


椿が楽しげな声をあげる。


「椿〜、今年の水着はどんなやつ?」


悠介の質問に、「おしえなーい」と椿はケラケラと笑う。


「去年の水着はナシだな」


西嶋がボソッと呟く。


「去年のやつは俺もナシ」


悠介も続いた。


このメンバーは去年も来ているんだなと、凛は思った。そういえば別荘に誘われた時に、毎年行っているんだと西嶋が言っていたことを思い出した。


「あー!なによ!ねぇ、須田くんは?」


椿は後部座席から身を乗り出し、須田に問いかけた。


「俺も去年のやつは、ちょっと」


と、一言。


「須田くんまで…!」


椿の言葉に皆が笑う。


椿は、このメンバーの唯一の花のよう。


香りも、身姿までも。


「……去年、あいつが……椿が着てきたのって、スクール水着なんだよね」

「そうなの?」

「マニアには受けそうだなって、思ったけど。俺はビキニの方がいいなー」


話のわからない凛に、説明をしてくれる須田の気遣い。


凛は申し訳ないと思ったが、嬉しくもあった。






「ついたー!」


車が停まり、車内には椿の声が響く。


車を降りると、辺り一面木に覆われていて、その中に一軒、ログハウスが建っていた。


「須田くん、運転お疲れ様」

「ん。マジで疲れた」


腕を伸ばし、欠伸をする須田。


「荷物置いてけって」

「え、でも」

「大丈夫だから。…くるちゃん可愛いから、余計なものは要らない。ね?」


含笑いしながら言う須田に、凛は従うしかなかった。





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