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初花凛々
第8章 青嵐
須田の運転する車は山を抜け、海を横目に、市街地へと入って行く。


そうして着いた先は、ハワイをテーマとした屋内プール遊園地。


凛の大好きな温泉も併設されているらしい。


「……須田くん、ありがとう」


駐車場に車を停めると同時に、凛は須田に礼を述べた。


昨日、あんなに衝撃的な光景を目撃したにも関わらず、凛は朝までたっぷりと眠ることが出来た。


それは須田が気を利かせて、何も聞こえないようにしてくれたからだと凛は思っていた。


それに、今日のことも。


西嶋に対し、上手くたち振る舞えず思い悩む凛のことを、こうして連れ出し解放してくれた。


そのことに、凛は心から感謝していた。


「……別に。海より、こっちのが楽しそうって思ったから来ただけだし」


須田は、凛の顔ではなく、そっぽを向きながら言った。


凛はその横顔を見ながら、どうして須田には絶えず女が出来るのかを理解した気がする。


さりげない優しさ。それはまるで母親のように、時に親友のように。


そんな須田を女が放っておかないのは、むしろ当然だろうと思えた。
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