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初花凛々
第10章 雲の峰
麻耶は凛の言葉に対し、責めたり、笑ったりはしない。


ただ、抱きしめる腕に力を込める。


「……凛はもっと、自分に自信を持てばいい」


そう呟いた。


「自信……?」

「凛は自分にどんな魅力があるのか、知らないんだね」


_____自信?魅力?そんなもの、自分には関係のないものだと思ってた_____


「魅力……なんて」

「そのままの凛でいいと思うけどね、俺は」


_____口ではなんとでも言える。



凛の心には、父親に愛されなかったという想いや、報われなかった恋による劣等感が深く根付いている。





「……麻耶?」


麻耶はそんな凛の顔を覗き込んで、今にも口付けそうな距離で、見つめる。


_____綺麗な睫毛。


凛はまた、麻耶の睫毛に見入った。


男性の顔をこんなに近くで見たことはない。凛は物珍しそうな表情で、麻耶の顔を見つめた。


「……凛は、可愛いよ」


前までは何とも思わなかった麻耶の言葉に、凛は顔を火照らせた。


「俺が言うんだから、間違いない。凛は充分魅力的だよ」


なんの経験もなくて、キスすらしたことのない凛。


そんな凛に麻耶は、自信を持てと言う。


_____そんなの、無理だもん……


凛はそう思ったが、優しい麻耶の瞳を見ていたら、先程までの不安や悲しみは和らいだように感じた。


「今日も凛は、いい匂いがする」


麻耶は凛の肩に顔を埋めて、そう呟いた。








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