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初花凛々
第2章 蝉時雨
けれど、働いて自分の力で生活をする日々は楽しかった。


ずっと父親に縛られ続けていた凛にとって、一人で気ままに生活するというのはとても幸せな時間に思えた。


華やかな見た目に反して、男性に媚びたりしない凛。


…というよりも、媚び方を知らないのだ。


例えるならば、凛は子どものように、無垢のまま大人になってしまった。


そんな凛に向けて、"お高くとまっている"だとか、"高嶺の花気取り"と、社内で陰口を叩く人もいたが、そうじゃない人だっている。


割と物腰の柔らかい凛は、上司にも可愛がられていたし、後輩にも懐かれていた。


同期の西嶋だって、凛には優しい。


_____須田は苦手だけれど。


月に一度、勿忘草で味わう和菓子も格別だし、それに銭湯で熱い湯に浸かり唸るのも極上の幸せ。


だから、男性との関わりがなくたって毎日楽しくて、幸せ。


凛は今の生活になんの不満もなかった。


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