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初花凛々
第11章 夏めく
_____今、何時だろう……


ザアザアと雨の音で目が覚めた凛。昨夜は麻耶の腕の中で眠ったはずなのに、目覚めると隣には麻耶がいなかった。


カーテンが開いている窓からは、ぼんやりと朝を迎えた様子が見えた。窓にぶつかる雨の雫。やはり雨が降っているのを確認してから、ふと部屋を見渡した。


麻耶は、床に寝転がって眠っていた。


_____もしかして、ベッドから落ちたのかな?


昨日はシングルベッドに二人で眠ったから、もしかしたら狭くて落ちたのかもと凛は思いながら、床に転がる麻耶にタオルケットをかけた。


_____やっぱり睫毛長い。


凛は麻耶の寝顔をみつめながら、さすがは女たらしと揶揄されるだけあるな、と凛は思った。


長い睫毛に、男なのに白い肌。唇は荒れ知らずという感じでプルプルとした桃色。スッと通った鼻筋_____
目を瞑っていても、整っている顔立ち。


以前は苦手だと思っていた麻耶の容姿も、今では素敵な部分として捉えているのが可笑しくて、凛は思わず笑みが溢れた。


「人の寝顔見て笑ってんじゃねー」

「きゃっ」


寝ていたはずの麻耶は、凛の手首を掴み引っ張った。その弾みでバランスを崩した凛は、麻耶の側によろめき、転んだ。


「何笑ってんの」

「麻耶、寝相悪いなって」

「……違うし」

「わかってる。私が場所取っちゃったんでしょう?ごめんね?」

「……別にいいよ。俺が泊まれって言ったしね」


そう言い残し、麻耶はバスルームへと消えた。
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