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初花凛々
第11章 夏めく
麻耶がシャワーを浴びている時間、凛は一人窓の外を眺めていた。


_____やっぱり、梅雨どきとは違って勢いがあるなぁ


そう思いながら、真夏の雨を眺めた。


窓の外を見るのももう飽きて、ふと視線を動かすと凛の目は一箇所に釘付けになった。


枕元に置かれた小さな箱。それはチョコレートでも入っているような大きさで、黒い下地にピンクラメでバタフライが描かれているもの。


けれどそれはチョコレートなんかじゃないということは、凛にもわかる。避妊具だ、ということが。


昨日、麻耶はこれを使う予定だったのだろうか。それとも、複数いるとされる他の女性と?


凛は悶々としながら、黒い箱を穴が開くほど見つめた。







「凛」


いきなり麻耶の声がして、凛は声が出せないくらい驚いた。


「送ってくよ」

「え、どこに?」


焦っている凛は、とんちんかんな返事をしてしまった。


「凛の家。会社にこのまま真っ直ぐは行けないでしょ」

「そっか。大丈夫だよ、歩いて帰れるから」

「……雨だから」


一言呟き、麻耶は髪を濡らしたまま、着替え始めた。







「さー、乗って」

「はい……」


また、敬語を使う凛に麻耶は笑って、車に乗るよう促した。


外はアスファルトが雨で濡れ、まだ一日が始まったばかりなのに、ムッとした蒸気を放っていた。



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