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初花凛々
第11章 夏めく
一世一代の凛の大きな決意。


_____麻耶の反応が怖い。


凛は自分で誘っておきながら、怖くて麻耶の顔を見る事が出来なかった。


_____でも昨日、麻耶はいいよって言った。


酔っ払いながらも確かに聞いたその言葉を、凛は何度も頭で反芻していた。


ところが麻耶から返ってきた言葉は。


「……なにを?」


事もあろうに、麻耶には凛の決意が全く伝わっていなかった。それにビックリした凛は、思わず飛び起きた。


「あ……クラクラする……」

「なにしてんの」


麻耶は呑気にケラケラと笑った。


「おはようジャンケン、凛も毎日してる?」

「あ、たまに」

「これ勝ち続けるとポイント貯まって、旅行券当たるらしいよ」

「そうなんだ。麻耶、詳しいね」


_____って、そうじゃなくて!


ちっとも気持ちが伝わっていないことに、凛は若干の苛立ちを覚えた。


「ほら、髪乾かして着替えて行くぞ」

「……嫌」

「嫌、じゃなくて。ガキかよ」


子どもみたいだと、麻耶は笑う。


「だから、しようって言ったの!」


凛はもう一度繰り返す。半ば意地になって。


「……なにを?」

「だから_____ 」


_____エッチしよう。


その言葉を待たずに、麻耶は凛をソファへと押し倒した。


「……二回言ったな、しようって」

「なっ……気づいてたの!?」

「当たり前じゃん?あ、通算三回か」


麻耶は悪戯が成功したときのような、ズルい笑みを浮かべている。


それを凛は下から見上げた。


「本気?」

「本気!」

「知ってる?エッチって痛いんだよ?」

「初めだけでしょ?」


なぜこんなに意地になっているのか、凛自身もわからない。けれども初めてを失うのならば、相手は麻耶がいい。そう思うから。


「……なんで、俺?」

「えっと……」


凛は麻耶に対し、絶大なる信頼を寄せていた。いつも守ってくれる優しい手。その手によって、この長くからみついた鎖を解いて欲しかった。


けれどそれを上手く言葉に表現する事が出来ず、凛は思ってもいない言葉を口走る。


「ま、麻耶は経験があって、上手そうだから……」

「あとは?」

「あとは……、会社の噂で、麻耶はテクニックがズバ抜けてるって聞いたので」


凛は必死だった。




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