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妖精王は軍人に奪われる
第2章 冷たい瞳
「逃げ出しても、あそこらの土地は
軍が開発する話になっていたからな…
お前の帰る場所はなくなる、ということだ」
いやらしい言い方に憤りを感じながら
アイリスは今度こそ絶望した
(軍が開発…!森が消える!?
私の帰る場所が…人によって消されるの?)
涙を滲ませ、再び目を伏せ下を向き
アイリスは己の運命を受け入れる覚悟を決めた
それから、飯とも呼べない食べ物や
水を出されてもアイリスは口にしなかった
誰が食べるものですか、と気丈に
振る舞っていたものの体力は低下していく
数日後、人々の賑わう音が耳に届き
大きな町に着いたのだろうとぼんやりとした
頭で思う。
空腹感も喉の渇きも、それを感じる
ことすら億劫で気怠げに身体を動かすと
ギシリ、と床が少し音を立てた
アイリスを乗せた馬車は、大きなホールの
手前で止まると、裏口から"大きな荷物"を
運んで、秘密の商売を行おうとしていた…