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はじめの一歩
第1章 Butterfly
学生時代の後輩で、弟がパティシエをしている奴がいた。
偶に店に顔を出して、ケーキを買った事もあるし、何度か会社の女の子に渡すホワイトデーのギフトをお願いしたりしていたから、兄を通さずとも話ができる間柄ではあった。

「市川くん、こんばんは。」

閉店準備をしている店に行き、声を掛ける。

「あ、武井さん、いらっしゃいませ。また今年もホワイトデー、作らせて貰えるんですか?」

「うん。それはもちろんお願いしたいんだけどね、今年は、もっと大事なものをお願いしたくて。」

「何でしょう?」

「実は、本命の彼女にプロポーズしようと思ってるんだ。だから、クッキーか何かお菓子の中に指輪とメッセージを忍ばせたいんだけど、そんな事出来るかな?」

市川くんはヒュー、と口笛を吹き、
ニコリと笑った。
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