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はじめの一歩
第6章 Piece of memory Ⅱ ー記憶の欠片 ー
敢えて目を逸らし、明後日の方向を見る。
後味の悪さは感じるけど、所詮見ず知らずの相手だ。
そうさ。
俺だって、これが知ってるコなら助けるよ。
意識的にそのコのことを見ないようにしながら、会社に着いてから今日やるべき仕事のことを考える。
そうして今日も降りるべき停留所が近付き、俺は降車ボタンを押して、バスを降りる。

それからも雨が降る度にバスを利用したけど、毎回彼女のコトを見つけてしまう自分がいた。

偶然なのか、必然なのか。

それは、その時の俺には解らなかったけれど。

結局、助けられずに後味の悪い思いをするだけなんだから、周りなんか見なきゃいいのに。

俺の目は自然と彼女を探してしまう。

そして、やっぱり助けられないまま、バスを降り、自己嫌悪に陥る。

そんなことが、何回あっただろう。

疲れるだけだから、バスを変えようか、と思いながら、習慣とは大したモノで。
いざその時が来ても、なかなか違う時間に家を出るのは難しく、結局今日も、同じバスに乗る。
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