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はじめの一歩
第6章 Piece of memory Ⅱ ー記憶の欠片 ー
俺が、このコが痴漢被害に遭ってるのを、もしかして、と思いながら、何度も見て見ぬ振りをして、スルーし続けたことは、確かな事実だ。

ベンチに座り、下を向く。
貧乏ゆすりのように足が小刻みに震えているのがわかった。
それを抑えるように、膝のあたりをぎゅっと掴む。

「何てお礼言ったら良いか、わからないんですけど…」

いつの間にか、吉田さんは近くの自販機でコーヒーを買ってきていて。

「本当は、もっときちんとお礼したいので、連絡先を教えて欲しいんです…お礼は、大したことできませんけど、改めてその時に…今日は取り敢えず、喉乾いたでしょうから、これでも…」

「やめてくれ!」

「…あの、…コーヒー、お嫌いですか…?」

「違う!俺は…全然良いやつなんかじゃない…礼言われる資格なんか…」

「どうしてですか?」
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