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はじめの一歩
第6章 Piece of memory Ⅱ ー記憶の欠片 ー
付き合う、と言ったところで。
節度を保つには、それなりの距離感が必要で。

清美ちゃんの門限は夜の8時だったし、
俺は当然そんな時間はまだ会社にいて。
会うのは必然的に週末、土日のどちらかの昼間のみ。
普段は専らメールのやり取りだった。
女子高生らしい絵文字や顔文字を多用したメールに事務的に返すのも可哀想で、頑張って使おうとしてるんだけど、どうやら俺のセンスはイマイチらしい。

そんな恋人ごっこを続けて、その年のクリスマス。

流石にプレゼントくらいは必要かな、と。
小さなチャームのついたネックレスを買って渡した。

清美ちゃんは、すごく喜んでくれて。
お返し、と、俺に、セーターをくれた。
シンプルなグレーのVネック。何編みと言うのか知らないけれど、身頃の部分にうねうねと絡まるような立体的な模様がある。

その、首元にはタグが付いてなくて。

「…コレ、もしかして、手編み?」

「はい。かなり頑張りました。男性用のセーターなんて初めて編んだけど…」
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