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はじめの一歩
第6章 Piece of memory Ⅱ ー記憶の欠片 ー
清美ちゃんの唇が、きゅっと引き結ばれる。

「何で、言ってくれなかったの?」

「…騙すつもりは、なかったんです…その、言うタイミングを、逸したって言うか…」

「そうじゃない!騙すとかそんなんじゃなくて…!もっと俺を頼れよ!俺は清美ちゃんの何?俺はそんなに頼りにならない?」

「…ごめ…な…さ…」

清美ちゃんが顔を伏せて泣き出し、俺はその身体をぎゅっと抱き締めた。俺の目にも、込み上げてくるものがあって。

歯を食いしばって、涙を堪えた。

清美ちゃんが、ぽつりぽつりと話し始めて。
俺は、初めて、清美ちゃんの身の上話を聞いた。

小学校に上がる前にお父さんが病気で亡くなったこと。
母子家庭で、不便や寂しさはありながらも細やかな幸せを噛み締めて生活していたこと。
お母さんの再婚。
その男が、会社の倒産で豹変し、酒浸りになってDVを始めたこと。
DVが清美ちゃんにも及び、危惧したお母さんが北海道の実家に清美ちゃんを連れて逃げたこと。
北海道の片田舎で、お祖父さんお祖母さんと、お母さんと、清美ちゃんの生活が始まったこと。
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