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 その腕で壊して 
第1章  
 新井くんの顔には疲れの色と共に、嫉妬と疑念が浮んでいた。
 中学生でもこんな顔をするんだと知り、単純に驚いた。




「ショックって・・・彼氏がいたってことは付き合う前から話してたじゃん。てか鍵、いいの?」




 タワーマンションの23階。
 鍵もかけず深夜の廊下をエレベーターホールに向かい歩き出した新井くんの背中とドアを私は交互に見つめる。
 しかし新井くんは気にも留めない様子で、「そうだけど、まさかエッチまでする仲の彼氏だなんて思いもしなかった」と答えた。
 大手通販会社社長のご子息の価値観では、空き巣と彼女の男性遍歴なら、後者に不安感を抱くらしい。



「そっか。・・・つまり、私のこと嫌いになったってこと?」



 新井くんの汗ばんだ手のひらの感触を右手に感じながら、ラグビー部所属らしい中学生のわりにはがっしりとしたシルエットにとぼとぼとついて歩く。



「まさか!」と振り向いて答えた新井くんの表情が予想より慌てていたから、私の自尊心はなんとか傷付かずに済んだ。








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