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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
「見たことある。光が殴られてるとこ」


「えっ?」


「前に、駅前の商店街の路地で。同じ制服着た子達に殴られてるとこ見たことあったの」


「…」



知ってたんだ。


光は胸の奥がズーンと重くなっていく感覚に襲われた。


いじめられていることを、誰かに知られたくないと思っていた。

自分だけで静かに耐えて、できるだけ誰にも知られずに抜け出したかったのだ。



それを、ついさっきまで名前すら知らなかった樹理に知られていたなんて。


羞恥心と、どこかにあった小さなプライドが傷ついた感触に身体が重くなる。



「可哀想だって…思いましたか?同情しましたか?いじめられて可哀想だって」



樹理の言葉を待たずに光は椅子から立ち上がった。


「迷惑かけてすみませんでした。やっぱり大丈夫です…帰ります…。ジャージは洗って、返しに来ます」




「私も同じだったから」




樹理は声色を全く変えずに告げた。


光が顔を上げると、真っ直ぐ見つめてくる彼女の黒い瞳があった。



「私もいじめに遭ってたから」



「樹理さんも…」



「光と同じくらいの頃がピークだったかな」


「…」



樹理の顔が、少し歪んだように光には見えた。



「女子のいじめは陰湿。男の子は、ストレートに暴力に行くらしいけど」



光は再び椅子に腰かけた。



「だから多分…光のこと覚えてたの。だから今日も」



ふぅ、と息を吐き出して樹理は口許に笑みを浮かべた。



「うちに来る?なんて言ったんだと思う」



その表情に、光の胸の奥で何かが熱く熱を帯びた。



━━━━━笑った。



その笑顔を見た衝撃で、光の中で先程沸きだした羞恥心や傷ついた小さなプライドが消えていく。



なんだろう?これは。




ふつふつと生まれてくる暖かさに心が満たされて、いじめの痛みなんてどうでもいいことのように思えてくる。



「━━どうしたの?」



「あっ…!いや …!」



食い入るように見つめる光に樹理は小首を傾げた。


心なしか赤面する少年にかすかに優しげな笑みを浮かべて、樹理は続けた。


「迷惑なんて思ってない。逃げてもいいと思う…もしも家に逃げられない理由があるなら、ここを、」



「ここを逃げ場にすればいい」
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