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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
その夜、光は樹理の家の客間に敷かれた布団の上に横になっていた。


電気を消した静かな暗闇の中で、タオルケットにくるまって今日あった出来事を考える。



━━━いつものようにされ放題殴られて、



神社で休んでて、



樹理さんに出会って、



ここを、逃げ場にすればいいと言われた。




父親には念のため友人の家に泊まるとだけメールを入れておいた。


樹理さんが「泊まるならそれくらいしなさい」と言ったからだ。



「光はまだ15歳。私は21歳。私、誘拐犯になるつもりはないからね」



自分の意思での外泊だと家族に伝えておけということだ。



━━━━━━きっとあの父親なら、気にもとめないだろ。



光は寝返りをうって父親のことを考えるのを止め、別のことに思いを馳せる。



「6歳か…」



樹理との年の差を計算した。


21歳。

やはり学生なのだろうか?


そういえば今日は樹理についてはなにも知らないままだ。


家がコーヒーショップで、正反対の雰囲気の妹がいること。


そして過去にいじめにあっていたこと…


それしかまだ知らない。


光はうつらうつらしながら、ぴんと伸びた樹理の背筋とまっすぐに見つめてくる瞳を思い出していた。

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