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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
「ごめん、光」


食卓を四人で囲んでいる最中だった。

樹理が光に謝罪する。


「この二人に話した。光の…その、諸々の事情」



いじめ、という言葉を直接使わずに、気まずそうに樹理は説明した。


「うん…聞いちゃった」


「大変だなお前も」


光は特にどうも思わなかった。


昨日までは確かに、いじめのことを誰かに知られることを避けていたはずなのに。

樹理に出会って、樹理と話すうちにそこまでこだわるべきことではないような気になってきたのだった。

それに、突然泊めてもらったのに家の人に何も説明がないというのも確かに非常識だろう。



「いいんですよ。大丈夫です」



光は笑顔で返した。

樹理は心なしかほっとしたような表情だ。


「でさぁ、光くん」


ここぞとばかりに真理は切り出す。


「これからどうするの?ずーっとここに住むつもり?…あ、いや。出ていけ!って言ってるわけじゃないよ?…ただ、学校もご家族も、どうするのかなって…」


先程姉に詰め寄っていた時と同じ内容だったが、随分言葉は柔らかかった。


「学校は行きますよ。家にも、たまに帰ります」


「たまに…?」


「母が帰ってくる時だけ。親の介護で1ヶ月に一度、一週間くらいしか帰ってこないんです」


「……そっか。光くんち、大変なんだね」



真理はいくらか同情したような目を向けた。


「おい、じゃあそれ以外はずっとここに居候するってか?図々しいやっちゃなー。立派な家出じゃねーか」



悪気はないのだろう。ガハハと豪快に笑いながら雄介が突っ込んだ。


「それは…」


光が俯きそうになったところで間髪入れずに樹理が言う。


「問題ない。雄介、あんただって居候なのは違いないでしょ。家賃払えなくてアパート出て転がり込んできたんだから」


「…はい」
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