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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
勉強机とベッドと本棚。そして衣装箪笥。

きちんと片付けられ整理整頓された室内。
かなり綺麗に片付けられている点を除けば、光の部屋はごく普通の少年の部屋だった。

樹理は光が箪笥から取り出した衣類を、大きなボストンバッグに詰めていく。

さながら、家出だった。

光の父親は休日出勤なのだろうか。不在だった。


━━━━私は、何をしているんだろう。


隣でせっせと荷造りをする大人びた少年をちらりと見て、ふと手を止める。


━━━━家出の手伝いなんかして。


光を丸め込んで、誘拐でもしている気分だった。

なぜこんな行動に出てしまったのだろう。


「樹理さん?」


光の瞳は美しかった。

見つめられると、吸い込まれそうになる神秘的な輝きがあった。

この瞳のせいで。
この外見のせいで、光はいじめられたと話した。


━━━━━━妬みだ。


「光の目はキレイだね」


「えっ…?!」


突然の樹理の言葉に光はあからさまに赤くなる。

目線を泳がせる少年を見て、樹理はふふと笑った。


「妬んだからいじめたんだ。いじめっこのやつら」


「え?」


「いじめる理由なんて、些細で馬鹿馬鹿しいことばかりだもん」


そう、いじめる側からひたら、そのきっかけなんて少し時間が経てば忘れてしまうくらいの小さなことなのだ。

それだけのことで、いじめられる側は身体にも心にも、貴重な時間にまでも傷を負わされる。


「割りに合わなすぎるよね」


「…」

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