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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
「私はね」


詰め終わったボストンバッグのファスナーを閉めて樹理は語った。


「生意気って言われたの。一番初め。その頃クラスの女子の間ですごく流行ってたアイドルグループがあって。皆そのグループの誰々くんが好きだとかカッコいいとか、誰々くんの趣味や好きなタイプは━━━って話題ばかりで盛り上がってた」


はぁと息を吐き出した樹理の隣で、光は静かに耳を傾けていた。


「そんなにアイドルの話になんて興味のない子も、周りからあぶれるのを怖がって無理に話に乗ってた。私はそれが馬鹿馬鹿しくて、ガン無視してたんだよね。それである日クラスの中心にいた女の子から言われたの。生意気って」


光の顔を見て、樹理は笑った。


「ほんと、どうしようもない理由でしょ。これがきっかけで私は高校入学まで約8年間いじめぬかれたってわけ」


そこまで話終えると、床に置かれていた樹理の手は光の手にぎゅっと握られていた。


涼しげな外見をしているのに、光の手は熱かった。


「熱ある?」


「ないですよ」


「慰めてくれてるの?」


「そういうわけじゃ…いや、そうかも…わかりません」


なぜ突然手なんて握ったんだろう。

衝動的にしてしまった行為に、光がだんだん正気に戻って赤面している横で、樹理は笑った。


「ありがとう」


握られた手を胸の高さまで持ち上げると、自分からもぎゅっと握り返した。
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