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瞳で抱きしめて
第4章 不意討ち
隣の店から、真理たちの賑やかな笑い声が聞こえる。


私はそんな彼らの声がどこか遠くから聞こえてくるような錯覚に陥った。


それは目の前の光のグレーの瞳のせいかもしれない。



神秘的で、透明感があって、見つめられると目が離せなかった。


まるで視線に捕まれているように、顔をそらせない。



告白に対して、どう返答したらいいものか私は分からなかった。


正直、光を今まで恋愛対象としての男として意識したことがなかったし、そもそも恋愛とかいうものと疎遠になって久しい。


とりあえず私が絞り出した言葉は、こんなものだった。




「光、私といくつ歳が離れてると…」



「知ってる!でも関係ないよ!」




強い口調であっさりと私の言葉は途中で潰された。



「絶対にそこつっこまれると思ってた。でも、はじめから俺にはそんなこと関係ないよ。だけど、樹理さんからしたらそんなこと言ってられないっていうのも分かってる…」



悔しそうに顔を歪めた光に、息を飲んだ。


間近で彼のそんな表情を見たのは、初めて出会った日以来だったから…



「6つも年下なんて、男として見れないかも知れないって…分かってる。だから、今すぐ恋人になってなんて言わない」



真剣な目だ。


私は声を出すことすらできなくなって、ただ光の綺麗な瞳に捕らわれていた。




「…候補にして」




光の身体が私の目の前に近付いた。


両肩に手を添えられて、私の額に顔を寄せる。




「恋人候補にして」



「恋人…候補…?」



やっと出た声はひっくり返っていた。

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