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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
光は夢を見ていた。



幼い頃、いつものように同級生たちに苛められて泣きながら帰宅した頃の回想夢だった。



母が光の頭を撫でながら優しく語りかける。




「またやられたのね。ん?…また言われたの?そんなことない。気にしないのって言ってるでしょう?」




身近な親族に外国人などいない、日本人の両親から産まれたはずの光は、生まれつき髪の色が明るい茶色で肌が白く、瞳が濁りのないグレーだった。



もちろんそれにはちゃんとした理由があるのだが、きちんと説明しても幼い子供にはなかなか理解がしづらいものがあった。



だから光はよく、同級生のいじめっこの標的になった。



捨て子だ、里子だと散々からかわれ、それを否定すると生意気だと暴力が飛んでくる。



それは中学に進学し、3年目となった今でも変わらない。

何しろ小学生の頃から同級生のメンツはほとんどかわらないのだから…いじめの標的もそのまま持ち上がりだった。


暴力はエスカレートし、整った顔立ちへの妬みも加わって顔への攻撃も増していた。



家には帰りたくなかった。



数年前から地方に住む祖母の介護で家と祖母の家のある故郷を行き来して忙しそうな母の心配する顔を見たくなかったし、父は息子のことにかまっている暇もないといわんばかりに仕事中心の生活で家には数日に一度深夜から早朝にかけて寝にかえってくるだけだった。




どこにも、居場所はない…




でもそんな生活ももうすぐ終わり。


中学を出たら、学校も変わってあの同級生たちとも顔を合わせなくなるだろう。


さっさと自立して、父親の庇護など受けないで生活できるだけの力をつける。



だから、もう少しの辛抱。



もう少しの……




突然、唇の傷がピリリと疼いた。



「ん……」



そうか、夢を見ていたんだ。

確か神社でうたた寝して……




瞼を上げると、そこには自分を見つめる知らない女性の顔があった。
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