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瞳で抱きしめて
第5章 新生活
入学式の日。


樹理さんに告白し、やや強引に認めさせた恋人候補という立場。



━━━━もう抑えないよ



その言葉通り、樹理さんに対する恋心にストッパーはかけなくなっていた。


というか、1度外れてしまうと、どうもとに戻したらいいのか分からなくなってしまった。


樹理さんに触れたい。


心にも、身体にも。



彼女の一番近くにいたい。


そんな気持ちは、どんどん膨らみ続けていた。




━━━━*━━━━━*━━━━━*




「光は部活やらねーの?」


鞄に荷物を詰め、まさに教室を出ようとしていたところを智也から呼び止められる。


智也は気の合う友人の一人だった。


バスケ部に入っているので、これから練習なのだろう。



「やらないよ」



「背ぇ高いんだから、バスケに来れば良いのに」


春から何度同じ誘い文句を受けたことか。

この学校のバスケ部は存続問題にかかるほど人が集まらないらしい。部員募集に余念がないのだ。



「バスケなんて授業で数えるくらいにしかやったことないから無理。俺急ぐから。じゃーな」


時計を確認して足早に教室を後にした。


背中から智也の「つれないなぁ」という声が聞こえたが振り向かなかった。



今から早足で歩けば、いつもより一本早い電車に乗れるはずだ。



中学の頃、樹理さんの家で真理さんや雄介さんと考えた作戦会議での決定事項。


その決まりごとは、学校への付き添い以外の項目はまだ生きている。



━━━━週の半分は自宅で夜を過ごすこと。



今日は、その半分に当てはまらない日なのだ。


つまり樹理さんの家で過ごせるということ。


一分でも早く、着きたかった。


一分でも長く、あのひとと過ごしたいから…
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