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瞳で抱きしめて
第6章 元カレ
「…でもぶっちゃけ、逆効果だったんだよね」
「え?」
「湊斗くんってさ、モテたから。ダンスがすごく上手なの。バレエ小さい頃からやってて、コンクールでいつも入賞しちゃうような人で。とにかくいつもキラキラしてて、友達も多くて明るい人」
当時を思い出しているのだろうか。
真理さんは難しそうな表情で、手に持ったクロスを握ったり伸ばしたりして弄っている。
いつもキラキラしてて、人気者。
女子からモテたそんな男が、女子から壮絶ないじめを受けていた樹理さんを守るために恋人になった━━━
その筋書きだけ聞いても、嫌な予感しかしない。
「当然、お姉ちゃんへのいじめはエスカレートしたよね。その辺は本人が詳しく話そうとしなかったから、具体的にどんなことされたのかは…外から見えるところしか私は分からなかったけど」
首を降って嫌な気持ちを降りきるようなそぶりをする真理さん。
「お姉ちゃんがいじめられる度に湊斗くん、いじめた本人にきつく当たってた。『樹理を苦しめるな』『樹理に手を出すな』って。でも、お姉ちゃんをいじめてた女子のリーダーみたいな子は、湊斗くんのファンだったから…もう、泥沼になるのは想像つくでしょ?」
俺は静かに頷く。
そして、佐々木湊斗に対して毒を吐いた。
「そいつバカなの?」
「…当時の湊斗くんは、すっごく真っ直ぐだったからね。こっちが恥ずかしくなるくらい。でも、今はその頃の面影ないくらい程好く歪んでるよ」
「え?」
「お姉ちゃんからふられた頃から、ひねくれていった。まぁ、最初が真っ直ぐすぎだったから、これでちょうどいいんじゃないかと思うけど…」
「樹理さんが、ふったの?」
聞き逃せないキーワード二つ目だ。
「あ、うん。これは聞いてなかったんだね」
「いつ?」
付き合ってすぐにふられたことを予想した。
だってアホすぎるだろ、佐々木湊斗。
樹理さんのこと、全く守れてないし。
しかし、俺の予想は大きく外れることになった。