この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
瞳で抱きしめて
第6章 元カレ
「あのあとしばらく、二人ともボロボロだったんだよ。湊斗くんは毎日毎日うちにきてお姉ちゃんにしつこく会おうとするけど、お姉ちゃんは断固拒否で。お姉ちゃんの部屋の前でいっつも押し問答になってた」
いつも冷静で大人しい人なのに、そんな樹理さんを想像できなくて、俺はショックを受けていた。
樹理さんをそんな風にしてしまうほどの恋。
顔も知らない湊斗に、知らない樹理さんを見せつけられているような錯覚に陥る。
悔しかった。
「でもね、そこは両方の家族が介入して、なんとか二人とも落ち着かせて…あとは時間が解決したって感じ?今は二人とも普通に接してるよ」
「今も樹理さんとそいつは普通に会ってるの?」
なんかイヤだな…と心のなかで舌打ちする。
たとえ今樹理さんの心のなかに湊斗がいないのだとしても、二人が接触するのは我慢ならない。
「湊斗くんは2年前から留学だかインターンだかでイギリスにいるよ。ずっとお姉ちゃんと会ってないね」
安心しなよ、お姉ちゃんはもう全く引きずってないから。
真理さんは笑顔でそう言うと、俺の目の前に淹れたてのカフェオレのカップをおいてくれた。