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瞳で抱きしめて
第6章 元カレ
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用事は全て済んだけれど、なんとなく車を走らせていたくて私は引き続きハンドルを握っていた。



運転は好きだ。



考え事をするのにちょうどいい。


運転に集中もしなくてはいけないから、どこか客観的に考えることができるから。




昨夜、ふと思い出してしまった苦い記憶。





━━━━━湊斗、そろそろ帰国だな…





2年前に海外へたつ前日に挨拶にきた湊斗を思い出す。




「樹理、俺はまだ懲りてないから」




それまで、またただの幼なじみとしての付き合いにすっかり戻っていた湊斗からの、突然の一言だった。



周囲に両親や真理もいる中で、一瞬だけ私に耳打ちした彼。



そのまま何事もなかったように私から離れ、店を後にした。



「帰ってきたら、また挨拶にきます」



再び幼なじみの顔に戻って、最後に私たちにお辞儀をして去っていった湊斗。




━━━━懲りてないから、か。





それは私との関係についてのことだろう。




爽やかに諦めが悪いのは、湊斗らしいといえば湊斗らしい。




だけど。





光の顔が浮かんだ。





「…ややこしいことになりそう…」




2年の月日が、湊斗の私への執着を消してくれていることを私は静かに願った。




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