この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
瞳で抱きしめて
第6章 元カレ
━━━*━━━*━━━*━━━
定期テストも終わり、あとは夏休みを待つだけとなった7月の中旬。
校内はテスト期間後ののんびりとした空気と、長期休暇にむけ浮き足だった熱気に包まれていた。
「戸田くん、夏休みは何か予定あるの?」
休み時間に入りノートを閉じたところで、隣の席の松井さんに声をかけられる。
小柄で愛嬌のある顔つきの彼女は、誰とでもすぐに仲良くなれるフレンドリーな性格をしており、すっかりクラスのムードメーカーだった。
「母親の実家に少しだけ帰省するけど。それくらいかな」
そう、受験生だった去年とは違い、今年の夏は緊迫感もない。
母と二人1週間だけ北海道の祖母の家に帰る予定だった。
母はそのまま夏休み明けまで北海道にいるので、その後はまた樹理さんの家で生活だ。
また樹理さんと二人で毎日散歩をできると思うと、自然と口許が緩む。
店の定休日にどこかへ出掛けたりできるだろうか━━━
「え、なに?ごめん」
つい妄想を膨らませて、松井さんの言葉を全く聞いていなかった。
「もう。だからさ、どっか日づけ合わせて皆で遊びいかない?七瀬くんとか麻由美も一緒に!」
彼女と一番仲の良い鈴木さんと智也を目線で示して松井さんは言った。
遊びに、か。
今まで学校の友達と遊びに行くなんて経験をしてこなかっただけに、どんな風に遊ぶのかさえピンと来なかったが興味を引かれたのも確かだった。
1日くらい、いいか。
この間樹理さんの元カレ話を聞いてから、益々樹理さんの側を離れたくなくなっていたのだが夏休みの間の1日くらいだったら。
「分かった。お盆の週だけ抜かしてくれれば、どこでもいいよ」
俺はそう返事を返していた。