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瞳で抱きしめて
第7章 恋人にして
鳥居が見えてきた。
折り返し地点に到着だ。
夜の神社の回りには人気がなく、夜風が木々の葉を静かに撫でる気配が微かに感じられるだけだった。
繋いだ手を引き寄せて、樹理さんの身体を抱き締める。
柔らかな彼女の髪が首筋に触れるだけで、胸の奥が熱くなった。
「樹理さん…」
髪に口づけて、頬を手で包み込むようにして瞳を覗く。
鳥居の側に一灯だけ光る外灯は、樹理さんの潤んだ瞳を映し出している。
そんな彼女の表情一つで、俺は簡単に欲情してしまう。
今すぐここで押し倒して、樹理さんの全てを暴き出してしまいたい気持ちになる。
口づけようと顔を寄せた時、樹理さんが口を開いた。
「光は、私が好き?」
なぜそんな至極当然の質問をするのだろう。
「何度も言ってる。好きだって」
額に額をくっつけて、気持ちを強調するように俺は言葉を続けた。
「好きで好きで、しょうがないよ。どうしたらいいのか分からないくらいに…」
言い終えると、すぐに唇を重ねる。
初めてキスをしてから、何度こうやって口づけただろうか。
すっかり覚えてしまった樹理さんの唇の温度。
舌を差し込むと、彼女は受け入れるように舌を絡めてきた。
強く抱き締めて、味わうように口腔内をまさぐった。
樹理さんの前髪がくすぐり、自制心を崩そうと揺すぶってくる。
「…私も」
唇が離れて短い息継ぎの後で樹理さんが発した言葉。
あまりにも唐突で、何を意味した言葉なのか分からなかった。