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瞳で抱きしめて
第7章 恋人にして
「え…?」
俺の願望が脳に錯覚を聞かせたのだと思った。
彼女が次の言葉を口にするまでは。
「光が好き」
「…!」
樹理さんの背中に腕を回したまま、しばらく動けなくなっていた。
「樹理さん、今何言ってるのか分かってる?」
彼女の唇を指でなぞった。
「俺の気持ちと、同じ気持ちってこと?」
「…あ」
我に帰ったような表情をした樹理さんは後ろめたそうに俺から目線をそらして、小さく謝った。
「ごめんね」
「なんで謝るの?」
慌てて顎に触れて顔を上げさせる。
見つめる樹理さんの目に涙が溜まっていた。
「なんで…泣きそうなの」
「…光は優しいから…」
右目からこぼれ落ちた涙が、俺の指を濡らした。
「甘えてるだけかも知れない…。光と一緒にいると、居心地がいいから」
今度は左目から落ちる涙。
それを指先ですくいとると、樹理さんの頬を撫でた。
「光に触れられると、嬉しくて、癒されて…でも、光にはまだ大切にするべき時間が沢山ある。…私がそれを奪うのはダメだって分かってたのに」
樹理さんは涙を拭うと、静かに言葉を続けた。
「言っちゃった…ごめん」
「だから、なんで謝るの?!」
強引に身体を引き寄せる。
「ねえ、俺のことが好きなら…っ」
樹理さんの瞳に、俺の顔が写り込んでいた。
「恋人にして…!」