この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
瞳で抱きしめて
第8章 対峙
「ねぇ、戸田くん。そのおばさん誰?」
後ろから俺の腕をひっぱって、松井さんが不満そうに声をかけてきた。
おばさん?
おばさんってだれのことだ?
全くピンと来なかったその単語。
…樹理さんが苦笑いしたのを見て、理解する。
その瞬間、カァッと頭に血が上ったのが分かった。
「ちょっと、松井さん…!」
明らかに樹理さんに対する悪意のある言葉だと分かった。
咎めようと俺が口を開きかけた瞬間だった。
「あのさぁ。世間的には22歳はオバサンって呼ばない年齢だよ?これから社会に出ていく若者なら、それくらいのマナー身に付けておいたほうがいいね?…さもないと…痛い目みるよ…?」
先程まで智也や真理さんたちと楽しげに話していた長身の男が、松井さんの目線まで顔を屈めて囁いていた。
ニッコリと、爽やかな笑顔を浮かべて。
でも、声は笑ってなかった。
「ね、おじょーさん」
「…!…は、はい…」
威圧感のある声。
松井さんの顔が凍りついている。
「あ、怖がらせたかな。ごめんね」
今度は本当に優しそうな声音。
その落差と変化のスピードがかえって恐ろしさに拍車をかけていた。
俺はその男を改めて確認する。
切れ長の目と、細身だが筋肉質な体つき。
こいつが━━━━
「…湊斗」
咎めるように呟く樹理さん。
湊斗、と呼ばれたその男は、相変わらずにこやかに笑顔を浮かべたままだった。
「ごめんごめん。気にしないで、ね。じゃあ、揃ったみたいだしそろそろ行こうか」
遂に対峙してしまった湊斗に、心が不穏なざわめきを上げ始めた。
後ろから俺の腕をひっぱって、松井さんが不満そうに声をかけてきた。
おばさん?
おばさんってだれのことだ?
全くピンと来なかったその単語。
…樹理さんが苦笑いしたのを見て、理解する。
その瞬間、カァッと頭に血が上ったのが分かった。
「ちょっと、松井さん…!」
明らかに樹理さんに対する悪意のある言葉だと分かった。
咎めようと俺が口を開きかけた瞬間だった。
「あのさぁ。世間的には22歳はオバサンって呼ばない年齢だよ?これから社会に出ていく若者なら、それくらいのマナー身に付けておいたほうがいいね?…さもないと…痛い目みるよ…?」
先程まで智也や真理さんたちと楽しげに話していた長身の男が、松井さんの目線まで顔を屈めて囁いていた。
ニッコリと、爽やかな笑顔を浮かべて。
でも、声は笑ってなかった。
「ね、おじょーさん」
「…!…は、はい…」
威圧感のある声。
松井さんの顔が凍りついている。
「あ、怖がらせたかな。ごめんね」
今度は本当に優しそうな声音。
その落差と変化のスピードがかえって恐ろしさに拍車をかけていた。
俺はその男を改めて確認する。
切れ長の目と、細身だが筋肉質な体つき。
こいつが━━━━
「…湊斗」
咎めるように呟く樹理さん。
湊斗、と呼ばれたその男は、相変わらずにこやかに笑顔を浮かべたままだった。
「ごめんごめん。気にしないで、ね。じゃあ、揃ったみたいだしそろそろ行こうか」
遂に対峙してしまった湊斗に、心が不穏なざわめきを上げ始めた。